人気ブログランキング | 話題のタグを見る

文法用語で説明するメリットとデメリット(15年8月28日)

文法用語はお好きだろうか?現在形、過去形、再帰代名詞、所有形容詞、不定形、人称変化、主格、対格、前置格など聞いただけで「面白そう!」と目を輝かせる人と「ウゲェー!」と逃げ出す人といるだろう。

さて、まいにちロシア語入門編の放送内での説明(口頭)を例にとるが、習ってない方々のためにカタカナで書く(テキストに載ってた書き方を使う)。あなたはどっちが好き?

* 説明A(できるだけ文法用語を使わない方法)

今回は人や物について「~している人」「~したもの」というように文で説明する表現を習います。人や物を文で説明する場合、カトールィという語を使います。まず実際にカトールィを使った文を聞いてみてください。
「ターム・ジヴョート・ストゥヂェーント・カトールィ・ウーチッツァ・ヴナーシム・ウニヴィルシチェーチェ」
この文では前のストゥヂェーントを後ろのウーチッツァ・ヴナーシム・ウニヴィルシチェーチェという文で説明しています。間にカトールィが入っていますが、カトールィ=ストゥジェント、カトールィはストゥジェントの成り代わりと考えてみてください。そして、カトールィは形容詞と同じ変化で、受ける名詞(今の文ではストゥヂェーントですが)と同じ性・数になります。つまり今の文ならストゥヂェーントと同じで男性・単数の形=カトールィとなっています。


何の話か、ロシア語を知らなくても分かった人はえらい。例文の意味は「そこにうちの大学で学んでいる学生が住んでいます。」

* 説明B(文法用語を使う方法)

今日のポイントその1はロシア語の関係代名詞カトールィの用法です。
関係代名詞は文と文を結びつける接着剤のような単語で、その直前にある名詞を説明します。その名詞は「先行詞」と呼ばれます。
例えば、「トゥイ・チラヴェーク あなたは人です」という文と 「トット・チラヴェーク・ドーラク・ボーリシェ・フスェーフ その人は誰よりも大切です」という二つの文があります。「人 チラヴェーク」と「その人 トット・チラヴェーク」は同一人物ですので、関係代名詞カトールィを使って「あなたは私にとって誰よりも大切な人です トゥイ・チラヴェーク・カトールィ・ムニェ・ドーラク・ボーリシェ・フスェーフ」という一つの文にすることができます。この場合、先行詞はチラヴェークです。


何の話か、分かったね。関係代名詞だ。実は説明Aは林田理惠先生「大人のためのロシア語」(14-4月期)で説明Bは現在の臼山利信先生「サバイバルロシア語」(15-4月期)だ。毎週、同じ文法項目の課を比較して聞いているので違いが面白くて、この記事を書いてみようと思った。

ではメリットとデメリットはそれぞれ何だろう?

説明Aには「親しみやすく耳で聞いて分かりやすい。文法恐怖症の人が逃げない。英語の文法と混同しない。」というメリットがある反面、「英語で関係代名詞を習っているのにその知識を流用できない。市販の文法書やネットでの文法説明を検索するキーワードが分からない。」というデメリットがある。

説明Bはその逆だ。「耳で聞いて分かりにくい。文法恐怖症の人はどんどん逃げる(笑)。英語と混同する」というデメリットがあり、「英語の知識が利用できる。キーワードが分かるので文法書やネットでの検索に活用できる」というメリットがある。

私はどちらが好きかって?いや、私ぐらい文法好き(文法用語も好き)になると、使わずに説明するのもドキドキして面白いのだ。

(ところで臼山先生は「人間・動物名詞/非人間・動物名詞」ってのを繰り返されているが、ふつう日本では「活動体/不活動体」っていうとこだ。何か意図があるんだろうか。カッコして併記してくれてもいいような気がする)

by L-monger | 2015-08-28 15:07 | ロシア語 | Comments(2)  

Commented by あやこ at 2015-08-28 23:41 x
あるひとつの言語で文法をある程度しっかり(文法用語を適切に使って)勉強しておくと、他の言語を勉強するときに応用が利くだけでなく、文法用語で説明されたときに簡単に「ああ、あれね」となって話が早いと思います。
旅行会話以上のものは求めない人や、人生でひとつしか外国語をやらない!と固く決めている人であれば、文法用語アレルギーを無理に治す必要もないのかもしれませんが、普通の学習者は、はじめはとっつきにくさを感じても、適度に文法用語を使って学習したほうが、結局は近道のような気がします。
外国語も2つめ3つめになってくると、いかつい文法用語に出くわしても「そういうもんか」と程よく気楽にもなれますし…(私の場合)。
Commented by L-monger at 2015-08-29 14:10
あやこさん、おっしゃる通りです。実は「みちこさん、英語をやりなおす」という本を読みました。英文法が分からない人はどこでひっかかるのかなーという興味で読んだのですが、大げさに言えば、言語について哲学的な内容を含んでいると思いました。みちこさんのように、日常語と違う意味を持つ、文法用語を軽く無視できない人がひっかかっているケースもあるようです。

文法用語を道具として使った方が説明も早いのはもちろんなのですが、大事なのは「文法概念」の方なのでそちらを理解するには必ずしも古くからある用語(例えば、関係代名詞)でなくてもいいのではないかと思います。しかし同時に「関係代名詞」や「relative pronouns」という用語を使えば、ネットで情報を引き出せる時代なので、それを考えたら用語は使った方が良いかなと思います。(ただし教える側も生徒側も、文法用語とはしょせんただの「標識」にすぎないので、大事なのはそれが指し示している現象本体であると忘れなければ、という前提付きです。具体的な例文を覚えないで文法用語だけ唱えるのはNGね)。

それにしてもロシア語の活動体と不活動体の区別はすごいです。対格や生格の形がそれによって違うってドイツ語にはない、すごい世界です。

<< 仏語コナン-29 第3の事件完... 夏なのに受講開始 12-1月期... >>